みんな違う音

 この10月から、本学こども芸大の5歳児クラスを対象に和太鼓の指導がはじまりました。毎年行っているこの指導ですが、今年も週に一回、子どもたちが元気に太鼓の練習をしています。今日は、そこでの出来事を書いてみようと思います。

「なんで太鼓には番号がついているの?」

 先日、いつものように練習していると、ある子どもが突然こんな質問を投げかけてきました。太鼓は一つひとつ、音も、打った感触も、重さも、全てちがいます。ですから、そのときの演奏に合わせて音を選んだり、奏者の間で共通認識をもつために、番号をふったシールを一つひとつの太鼓に貼っているのです。質問をしてきた子は、そのシールが気になって訊ねてきたのでした。

「みんなの顔や声が一人ひとりちがうように、太鼓も一つひとつ音がちがうから、お名前をつけているんだよ。」

 指導者がそう言うと、

「ホントだ!全然違う!」

「4番さんはこんな音だよ。9番さんはどんな音?」

などと、音の違いをおもしろがって、その音色を味わっている様子でした。

 

 毎年ですが、子どもたちは本当に一生懸命練習に取り組みます。熱中するあまり、練習そのものではなく“自分のお気に入りの場所で練習したい!”というこだわりから、太鼓の争奪戦に発展してしまうという光景がたびたび見られます。

 しかし、太鼓の音そのものを楽しむ耳をもつことができたら、練習はもっともっと楽しくなるのではないでしょうか。今回のやり取りは子どもたちの印象に残ったようで、場所にこだわる傾向があった子どもたちも、自分のお気に入りの場所でなくとも熱心に練習に向かう姿勢が見られました。指導者が「こうしなさい」と教え込むのではなく、今回のような“子どもたち自身の気づき”から、音の質に意識が自然に向く、というのは大切なことです。このようなチャンスを、指導者自身、これからも見逃さないようにしたいなあ、と改めて思った出来事でした。

 

Gozu Yoshino